科研ワークショップ in Hamburg

2019年4月29日〜5月2日の4日間、ハンブルク大学にて当研究所主席研究員の苫米地が研究代表者を務める科研プロジェクト「アバヤーカラグプタ著作の新出梵文資料校訂を通したインド仏教の学知形成様態の解明」(基盤(C)(一般)・課題番号18K00074)の研究集会が開かれました。

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このプロジェクトは、近年中国からサンスクリット・チベット語のバイリンガル写本影印版が出版された、インド後期密教の大学僧アバヤーカラグプタ(11〜12世紀)の主著『アームナーヤマンジャリー』のテクスト校訂を主な目的とするもので、昨年9月には東京で同テクストを題材とするワークショップを開催しました。今回は場所をハンブルク大学アジア・アフリカ研究所 に移し、同大学教授でインド密教文献研究の最先端をゆく世界屈指のサンスクリット学者であるHarunaga Isaacson博士のご指導のもと、『アームナーヤマンジャリー』第7章のリーディングセッションを開催しました。日本からは、苫米地の他、研究分担者の倉西憲一(大正大学)・加納和雄(駒澤大学)の両博士およびハンブルクに研究滞在中の菊谷竜太博士(京都大学)が出席、加えてIsaacson教授のもとで研究するハンブルク大学の学生・研究員数名の参加を得て、実り多い活発な議論を行うことができました。

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近年、インド仏教研究の分野では新出サンスクリット写本資料の発現が相次ぎ、これまで蔵・漢の翻訳を通してしかアクセスできなかった文献がその原典で読めるようになってきました。このような状況のなか、地味ではあっても堅実な文献学の手法に基づく基礎研究の重要性が高まっていることは言うまでもありません。当プロジェクトでは、今後もIsaacson教授をはじめとする国内外の第一線の研究者との緊密な連携のもと、この貴重な新出資料の内容解明を目指し着実に研究を進めてゆきます。