Manuscripta Buddhica ワークショップ

2019年9月11日〜14日、イタリアのナポリ湾に浮かぶプローチダ島で開催されたManuscripta Buddhica ワークショップに当研究所の苫米地主席研究員が出席しました。Manuscripta Buddhica プロジェクトは、20世紀イタリア東洋学の大御所であるGiuseppe Tucciがチベットでの調査旅行の際に撮影したサンスクリット仏教写本写真のコレクションを調査・校訂出版することを主な目的として発足したもので、ナポリ大学L’Orientale校のFrancesco Sferra教授が中心となり、世界各国のサンスクリット文献学者のコラボレーションによって遂行されています。今回のワークショップは、科研基盤(A)「グプタ朝以降のインド仏教の僧院に関する総合的研究」(代表・久間泰賢三重大学准教授)との共同で開催され、日本からも同科研プロジェクトの関係者が多数参加しました。

四日間にわたるワークショップでは連日、最新の資料に基づくサンスクリット仏教文献のリーディングセッションが行われ、苫米地はアバヤーカラグプタ作『アームナーヤマンジャリー』をリーディングの素材として提供しました。その他にもアーナンダガルバ作『一切金剛出現』・トリヴィクラマ作『三理趣灯明』・サマンタバドラ作『サーラマンジャリー』や著者不詳の『セーコーッデーシャパンジカー』といった現在進行形で研究が進められているテクストが取り扱われ、まさにサンスクリット仏教文献研究の最先端の現場に立ち会う貴重な機会となりました。

会場となったプローチダ島のナポリ大学Scuola di Procida per l’Alta Formazioneは、海の向こうにヴェスーヴィオ山やカプリ島が一望できる風光明媚な立地にあり、屋外テラスでのコーヒーブレークや昼食を挟んで、連日快適に文献読解に集中することができました。

 

 

現地は連日快晴で気温も30度を超える天候でしたが、空気が乾燥し心地よい海風も吹き、エアコンの無いワークショップ会場でも快適に過ごすことができました。Sferra教授をはじめHarunaga Isaacson教授 (ハンブルク大学)・Arlo Griffiths教授(フランス極東学院)ら斯界の第一人者の参加を得た今回のワークショップは、厳密な文献学的研究を志す我々にとって、ややもすれば雑事に紛れがちな日常を離れてサンスクリット文献に没頭できる極めて有益な四日間となりました。