科研研究会を開催しました

2020年1月〜2月にかけて、2件の科研研究会を開催しました。

1月14〜21日には、当研究所主席研究員の苫米地が研究代表者を務める科研基盤(C)「アバヤーカラグプタ著作の新出梵文資料校訂を通したインド仏教の学知形成様態の解明」と、科研基盤(A)「グプタ朝以降のインド仏教の僧院に関する総合的研究」(代表者:久間泰賢三重大学准教授)および科研基盤(C)「密教の諸実践に通底する原理としてのアーヴェーシャ(憑依)の研究」(代表者:種村隆元大正大学准教授)の3プロジェクトによる合同研究会を開催しました。

大正大学綜合仏教研究所で開かれた本研究会では、ライデン大学研究員のPéter-Dániel Szántó博士を招聘、近年サンスクリット写本が新たに発見されたインド密教文献の集中的なリーディングセッションを実施しました。Szántó博士は、Oxford大学の碩学Alexis Sanderson教授指導のもと学位を取得した気鋭の古典インド学者ですが、サンスクリット・チベット語はもとより、中期インド語や現代インド語にも通じ、仏教やシヴァ派を始めとするインド諸宗教に造詣の深いSzántó博士の参加を得た今次研究会はたいへん実り多いものとなりました。

 

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一方、2月15、16の両日には、苫米地が研究分担者として参加する科研基盤(A)「グプタ朝以降のインド仏教の僧院に関する総合的研究」データベース作成班の研究集会が人文情報学研究所を会場として開催されました。

この科研プロジェクトは、インド仏教の僧院の歴史を文献・美術・考古の各分野から総合的に捉え直し、従来言われてきた、密教化の傾向がインド仏教衰退の主因であるとする見方を根本から再考することを目的としています。本プロジェクトで得られた知見は、Indo-Tibetan Lexical Resource (ITLR)をプラットフォームとするデータベースに集約されることになっており、今回の研究会では、データの入力について種々の議論を行うとともに、実際の入力作業を通じてデータ入力に関する具体的な問題の洗い出しを行いました(ITLRについては本ブログ2019年4月の記事を参照)。

 

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